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文化の連続性


船は石垣島に向かって静かに那覇新港を出港した。この船、宮古、石垣を経由して最終的には台湾の基隆まで行くのだそうだ。


現在、ほとんどの世界の街は空路でつながれている。だから海外旅行をする時、僕たちは点から点へ移動している。移動距離というのは厳密には線なのだが、機内食をチキンにするか魚にするか迷っている輩に、例えば、日本とベトナムが文化の連続線上にあるという実感はないだろう。だから、僕たちは着陸したとたんに激変する環境に軽いカルチャーショックを受ける。まあ、これも旅の醍醐味ではある。

しかし、船の中でふと考えた。沖縄を通って台湾に行くと、すんなり入っていけそうな気がする。例えば、沖縄の家屋の石垣や、門のところにある魔よけの塀「ひんぷん」やシーサー、そして家のつくり。東京の人間からするとかなり特殊なものに見えるが、台湾の人にはわりと普通に受け入れられるのかもしない。

以前、僕はベトナムの家のつくりが沖縄の家屋にそっくりだったので驚いたことがある。シーサーもいた、ひんぷんもあった、家も石垣で囲まれていた。もちろん、中国文化というのがすべてに巨大な影響力を及ぼしているのだろうが、国家の引いた国境線を霞ませるほどの文化の力強い潮流というのは見ていて痛快だ。


船は快調に波をける。明日の朝、僕は石垣で降りる予定だが、もし、寝坊したら・・・次の寄港地はもう台湾。「寝過ごして台湾」というのも面白いかもしれない(残念ながら今回はパスポートを持っていないが)
おそらくそこには沖縄と同じ線上の文化が息づいているはずだ。そんな仮説をたてること、これもまた旅の楽しみのひとつナリ。


2005年9月記



今日の一枚
”シーサー” 日本・沖縄県竹富島 2002年


マジョルカの春  フランスに息づくケルト  カイトランナー




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