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フランスに息づくケルト


フランスというひとつの国の中でも、それぞれの地方によって隣国の文化的影響を受けているのは面白い。アルザス地方はドイツの文化、フランドルはベルギーからの流れ、「ミディ」と呼ばれる地中海沿岸はイタリアやスペインと共通する地中海文化圏といった具合だ。
しかし、これを日本に当てはめようとするとフランスとはちょっと事情が異なる。理由は簡単で日本が大陸の隅っこにある島国だからだ。四方八方から文化や人々が流入してくる陸続きの国境をもつ国とは違う。けれども、以前、沖縄の時にお話したように陸続きの国境がなくても近隣の文化は流入してくる。ブルターニュ地方もまさにそんなところだった。


実はずっと気になっていた。フランスにあって名前が「ブリタニア(グレートブリテン)」とはこれいかに?(なにせ僕のブルターニュ地方についての予備知識ときたら、リンゴ酒のシードルやそば粉の入った特徴のあるクレープが名物だということくらいだったから)けれども行ってみたらその名前の由来が良くわかった。石を積み上げて作った家々と教会、「ドルメン」や「メンヒル」という巨石遺跡、なだらかに続く丘陵地帯。風景はまるでイギリスかアイルランドのよう。そう、地名のとおりブルターニュはケルト人によって開拓され今もその文化が息づいている。

地図を眺める。フランスの西部、大西洋に角のように突き出たブルターニュ半島のすぐ上、ちょっと海を渡ればイギリスの南岸にたどりつく。文化を考えるときにはまず現在の国家という枠組みをはずしてかからねばならない。そうすると新たな「くくり」が見えてくる。アイルランド、イギリス、仏ブルターニュこの3つ地域が海を媒体にしてしっかりつながる。ケルト文化圏の一丁あがり。当然その海の名は「ケルト海」となるわけだ。


ブルターニュの石造りの街は重厚。ちょっと冷たい印象を与えるが同時に神々しさのようなものを感じる。唯一残念だったのは冬の気候もケルト的だったこと。暖流のおかげで気温はそれほど低くないが毎日雨ばかり。低く垂れ込めた灰色の雲は街並みにマッチしているものの天気は良いに越したことはない。

カンペールの街を歩く。周りの家々と同じように石で作られた重厚なその建物はリセ(高校)だった。冬休みの校舎は人影もなくどこか寒々しい。理科室の人体模型もさびしそう。


2007年1月記



今日の一枚
” 冬休みのリセ ” フランス・カンペール 2000年




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