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ブライトンの海へ


波の音が聞きたくなると僕はロンドンのビクトリア駅から列車に乗った。所要1時間、目指す海辺はブライトン。イギリス南部の海岸線だ。


列車を降りて駅から坂を下っていくと目の前に小石の浜辺が広がる。新旧2つのピアが海に突き出している。古いピアはもう使われていないらしく桟橋が撤去されていて、さび付いた鉄の巨体だけが水の中から「にょきっ」と生えていた。


浜辺に腰を下ろして海を見ていると、目の前を二人三脚の女の子が通る。ハンカチで足首を結んで、一組、そしてもう一組・・・「今日は何の日?二人三脚の日?」と訊ねると彼女たちは人差し指を唇にあて「内緒・・・」と言った。結局、その不思議なイベントの正体はわからずじまい。僕の詰めの甘さは毎度のことだ(笑)


小石の上に寝転がって目を閉じた。冬の日差しの中に少しだけ春の匂いがした。


2007年3月記



今日の一枚
”ブライトンの浜辺 ” イギリス・ブライトン 1994年


フランスに息づくケルト




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