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手すきガラスを通して見たラトビア その2


ちょっとラトビアの評価が厳しすぎますか?いやいや、スクラップ&ビルドの新旧入り混じった都市と違った歴史の風格が漂う街は大好きですよ。でもラトビアにいるとなぜかウクライナが僕の脳裏を過ぎる。そう、賄賂をむしり取ろうとする警官、路上での恐喝、溢れる酔っ払い、その後の内戦、とあまり良い印象の残らなかったウクライナ。もちろん、ラトビア人は十分親切だし、警察もちゃんとしている。治安も良い。けれども、どことなくウクライナと同じ匂いが・・・気のせいかな?


ラトビアに対する僕の「東側諸国的な印象」に大きく影響しているのは「エストニアに比べロシア語を耳にする機会が圧倒的に増えた」ということかもしれない。エストニアもラトビアも人口に占めるロシア系住民の数はほぼ同じ3割程度。しかし、道路標識さえもエストニア語に統一されているあちらに対して、ここラトビアでは看板はロシア語併記。市場に行ったら「ドーブロ・ウートロ(おはようございます)」とみなロシア語を話しているではないか。
そこで地元の人に聞いてみた。「この国の言語はどうなってるんですか?」と。答えはこうだ。ラトビアの公用語はもちろんラトビア語だが歴史的背景からロシア語も使われている。中高年はロシア語の教育を受けているのでラトビア語とロシア語を話す。若い人たちはラトビア語と英語、それに日常会話程度のロシア語。他方、先に述べたロシア系やベラルーシ系の住民などロシア語しか話せない人たちも多い。
「ああ、市場はねぇロシア語率が高い特殊な場所なんですよ」なるほど、ロシア系の人たちはそのネットワークを使って商いに励んでるわけか。
それにしても、「ロシア語話さなくちゃいけない場面」というのをこの国の人たちは瞬時に感じとるんだろうか?言語が道具だとすれば、ラトビアの人はまさに道具を使う達人だ。


旅行者の間ではエストニア、ラトビア、リトアニアはひと括りで「バルト三国」と呼ばれている。この三カ国の首都と観光スポットを駆け足で回るという旅が定番のようだ。ところが、僕の旅は相変わらずスローペースでエストニアの離島なんぞに行ってたらエストニアとラトビアの首都だけで時間切れとなってしまった。短い旅の中で解ったのはエストニアとラトビアって全然別物なのだということ。旅行者にとっては「バルト三国」だけど、当の国の人たちにとってはタリンやリガは遠い他国の首都なのである。東京に住む僕たちがソウルや台北を身近に感じるか?というのと同じ。
バルト三国はそれだけ多様だ。そうなるとリトアニアも気になってくるな(笑)実はこの三カ国の中で僕が唯一文化的に予備知識があるのはリトアニアだ。リトアニア映画を何本か見たことがある。そのお話は次回訪問の時にとっておくとしよう。



2016年10月記



今日の一枚
” コーヒースタンド ” ラトビア・リガ 2016年




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