<< magazine top >>










手すきガラスを通して見たラトビア その1


ラトビアのリガ駅から郊外への電車に乗った。列車はすぐにダウガヴァ川を渡る。車内は待合室と見紛うくらい広くて、長椅子の座席には乗客がポツリポツリと座っている。みな無表情。波打った窓ガラスは手すきガラスであろうか、リガの街影が歪んで見える。先の尖ったスターリン・ゴシック建築の古い高層ビルは科学アカデミー。巨大な4棟のかまぼこ型の建物は中央市場、かつてのドイツの飛行船格納庫を改装したもの。


昨日までいたエストニアとラトビアは隣同士だけどずいぶん違うなぁ。小さいけれど小奇麗に改修されていたエストニアの町並み、対照的にリガには(ハンザ同盟時代のドイツの影響か)レンガ作りの古いビルやゴシック建築の教会がたくさんある。その間に朽ち果てた木造建築の民家がそのまま残っている。街角の監視カメラが目に付くようになり、人々の表情も心なしか険しい。世界中どこにいっても見る都会の風景だ。エストニアを自然に囲まれた保養地と例えるなら、ラトビアは日常生活の場所かな。


リガの茶色いレンガの建物や倉庫街で開かれるサンデーマーケットの風景を見ているとニューヨークを思い出す。今、列車渡っている川には中州があってこれもまたイーストリバーのルーズベルト島に似ている。
しかし、走っている路面電車や、巨大な市場、ソ連時代の建築、人々のクールな表情を見ると旧東側諸国の雰囲気がプンプン伝わってくる。東側の国?エストニアにいるときはそんなこと考えもしなかった。


人々の顔立ちから受ける僕の感想は「ドイツとロシアが綱引きをしている感じ」とでも言おうか。スカンジナビアが入ってるエストニア人の顔とは違う。ゴミの分別回収も行われていないようで「ペットボトルも缶も全部そこのゴミ箱に投げておいてください」と言われた(笑)
エストニア同様10年以上前からEU加盟国で2年前にはユーロ通貨も導入された。経済危機と緊縮財政を経験したが、その後は順調に成長しているようだ。うーん、ラトビアは貧しい国なのか?と問われればそうではないけれど、どことなく哀愁が漂っているのは何でだろう?



2016年9月記



今日の一枚
” 科学アカデミービルが見える風景 ” ラトビア・リガ 2016年




fumikatz osada photographie