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ケープコッドの夏


ボストンの東、プリマスという町を付け根にして先っぽのプロヴィンスタウンまで、ちょうどクルッと巻いたしっぽの様な形の岬がケープコッドだ。日本語にすると「鱈の岬」の意。
ケープコッドはニューヨーカーやボストニアンの別荘地。ここはまた米大統領にも縁が深い土地だ。岬の中ほど、ハイアニスという町にはケネディー家の別荘があって、今でもファミリーが暮らしているし、沖合いに浮かぶマーサズヴィンヤード島にはクリントン元大統領の別荘がある。


「ハイアニスは圧倒的にホテルの数が足りないのよ」道で僕をヒッチハイクしてくれた女性はハンドルを握りながらそう言った。なるほど、夏休みの今ほとんどの宿が満室の看板を出している。しかし、小さな町の宿泊事情なんてどこもこんなものだろう。
町外れの国道沿いのモーテルに空室を見つけた。裏に小さなプールがあるアメリカ的風景の典型のようなモーテル。B級サスペンスだったら、この後、殺人事件が起こるのだ。


幸いにも殺人事件は起きず、プールでひと泳ぎした後僕は町まで歩いた。 メインストリートには小さいけれど洒落た店が並び、その周りは松林と芝生の庭がある別荘地。鴨が泳ぐ葦沼。その間をくねくねと進む小道の終わりには静かで素朴なニューイングランドの海岸があった。


2005年8月記



今日の一枚
”ビーチハウス” アメリカ・マサチューセッツ州ハイアニス 1992年


1 ナンタケット




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