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何もかもロシアのせい その2


NHKのアンケート


NHKのオンラインニュースにキエフの一般市民「30人」に聞いたウクライナ戦争に関するアンケートが載っていた。

昔「クイズ100人に聞きました」というクイズ番組があった。(街角で100人にアンケートを採ってより多数を占める答えを当てるというもの) クイズ番組でさえ100人にアンケートしているのに、30人というサンプルはちょっと少なすぎやしないか?
国民から有無を言わさず受信料をむしり取っている日本の公共放送は、わずか30人のアンケートをキエフの街角で行い、それをあたかもウクライナ国民の総意のように書いている。

次のような内容

「この戦争をどう終わらすべきか?」という質問に対して30人中28人が「譲歩しない」と回答
「国際社会に期待することは?」兵器供与19人、制裁強化3人


作為的か偶然か、わざわざ東南部出身の人をピックアップしロシアに批判的な意見を載せている。
まあ、ドンバス地方出身の人でも遥々西ウクライナ(キエフ)に避難してくるような人は鼻から親ウクライナ政権、反ロシアだろう。 問題はそれらがドンバス地方の住民の多数派意見かということである。
キエフの圧政に反発した人、故郷の土地を愛する人、身動きの取れないお年寄り、家族をロシアに持つ親ロシアの住民、ウクライナ南東部に住む人たちは今も嫌がらせのように降り注ぐウクライナ軍の砲撃にさらされている。


それらの地域で同じアンケートを行えば全く逆の回答が寄せられるに違いない。
「戦争をどう終わらすべきか?」の質問に対して南東ウクライナの人たちは「ロシアが勝利すること」「ドネツク人民共和国が勝利すること」とは絶対に応えないだろう。
P・ランカスター氏の動画に出てくる人々が口にするのは「8年も続くこの戦争を早く終わらせて欲しい」「停戦協定を破ったウクライナ政府にもう一度停戦のテーブルについて欲しい」ということだ。
「国際社会に期待することは?」の質問にはおそらく「自分たちのことを知って欲しい」「これ以上ウクライナ政府に兵器の供給をしないで欲しい」と答えるだろう。 なぜなら、アメリカがウクライナ政府に提供する兵器は自分たちの上に降り注ぐからである。
もし、キエフと南東部双方で同じアンケートが行われたならこの公共放送の視聴者はこれが泥沼化した内戦だと容易に理解できただろうに。


NHKだけではない。私が普段目にする日本のメディアのウクライナ報道は同様に偏向している。
ロシアの支配地域をウクライナが奪還したとまるで鬼の首を取ったような報道をしている。
評論家はまるでゲームを楽しむかのようにウクライナとロシアの戦力分析をする。


ウクライナがロシアに勝利することが最善の結末、平和への道だと視聴者に信じ込ませることは実に浅はかだ。
それはウクライナの平和への道でもなんでもない。8年にわたって続いてきた反政府側の人々、親ロシア、ロシア語話者への弾圧と対立を繰り返すだけだ。


国民が国際社会に対して「もっと武器をくれ」と言ってる国が果たしてまとものな国なのだろうか?
欧州はすでに武器供与の要求に応じなくなったし、アメリカが供給する武器の大半は行方不明。どこに転売されているのか想像もつかない。 前線に届く武器は東ウクライナの住民の家や命を無差別に奪っている。
はて?これがウクライナ国民の望む平和なのだろうか?


ウクライナ南東部4州でロシア編入をめぐる住民投票が始まった。編入を希望する住民が多数を占めるような気はするが、まあ、結果をみなければわからない。
しかし、結果の如何にかかわらず、ウクライナ政府は投票について「公正ではない」と非難するだろう。
日本のメディアにはウクライナ政府側のコメントのみが載るであろう。あたかも投票がロシアよるイカさまのように報道される。クリミアの時と全く同じ。
それでは聞きたいが、ウクライナ政府はこの地方の人に対して手を差し伸べたことがただ一度たりともあっただろうか?
度々引用するP・ランカスター氏のビデオでヘルソン市の人々はこう話す。
「どちらの国民になってもかまわない。ただ、自分たちの生活が少しでもましになるのならそちらを選ぶだろう」
これが市民レベルの正直な意見だと思う。年金も未払い、収入は光熱費でほぼ消えるような財政破綻国家と社会保障を約束してくれる大国、どちらかを選ぶとなれば私なら後者だ。 おのずと投票の結果は見えているような気がする。


日本のメディアに言いたい。きちんと現地に入って投票をした住民の声を拾いなさい。 遠く離れたキエフの市民やウクライナ政府の発表を拾うのではなく。住民はどちらに投票したかきちんと答えてくれるはずだ。
ウクライナ側の発表ではなく投票が公正に行われたかどうかを自ら取材しなさい。仮に投票の結果がロシア寄りとなっても、その事実をきちんと報道しなさい。 そして、なぜ市民がそれを望んだのかをウクライナ政府に忖度することなく取材しなさい。



追記


9月23日
P.ランカスター氏がヘルソン市から5日間に渡る住民投票初日の様子を伝えている。
初日はエッセンシャルワーカーと州職員に限った投票が行われた。

ロシアによって独立を承認されたドネツクやルガンスク人民共和国はほぼ100%ロシア支持だが、ヘルソン市は以前リポートした時の印象ではロシア支持派とウクライナ派に分かれていた。

一般市民に先立った初日の投票は、医療機関や州施設などに選挙管理委員が投票箱や用紙を持って出向くという形で行われている。

投票用紙には以下のようなことが書かれている
ーヘルソン州のロシア連邦に編入に関する投票用紙ー
ヘルソン州のウクライナからの離脱とヘルソン州の独立ならびに同州のロシア連邦への編入について
賛成 または 反対

投票が終わると透明のプラスチック製投票箱はロックされヘッドクォーター(HQ)へ。
夜までHQに保管され、セーフパックされメインHQへ送られる。
開票は対象地域の投票がすべて終わってから。それまで投票箱は厳重に封印される。
以上、ヘルソン港湾局会場での取材。投票のヘルパーは港湾職員。



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ヘルソン州緊急医療および災害センターで選挙管理委員到着前、職員に話を聞く。

P.ランカスター(以下PL) : この町の状況はドネツクやルガンスクとちょっと事情が違う気がするのですが?
あちらはすべての人がロシア編入を希望しているがここは意見が割れる。あなたの意見は?

保健局長の男性: もちろん最初の頃は何割かの人々はウクライナ政府を支持していました。
しかし、ヘルソンではウクライナ支持の人々の数はどんどん減っています。砲撃や断続的に続く威嚇のためです。
だから今日ヘルソン市民は自らの選択をしてくれると思ってます。それは母国ロシアへ帰るという選択です。
私個人としては30年間この日を待ち望んでました。そして今日、私は平和と秩序と安定、そして地域の発展に投票します。

PL: 投票に来る人々に対してあなたはロシア側の何らかの圧力や強制を感じますか?

男性: もちろん、彼らは何も強要しません。住民投票は極めて民主的です。
だれも個人に強要はしません。また、ロシアの市民権をとることも強要しません。 しかし、私の見る限りロシアのパスポート申請に並ぶ列は長かったです。 正確にはわかりませんが2万人もの人がパスポート申請の列にならんだのです。係員も対応しきれないほどの数でした。

私が話した人たちはみな最初はロシア側の行政に対して警戒していました。
しかし、ウクライナ政府による砲撃やテロ攻撃もあり今ではみなロシア編入に票を投じようとしています。
それが前進する唯一の道だと思います。

専門分野の立場から。ロシアのおかげで薬剤や住民の医療費が無料になったのは非常に重要です。
市内の3つの医療学校の学費も無料になった。市民はようやく世界基準の医療サービスを受けられるようになったのです。



投票待合室の人々に質問

PL: 率直にお聞きします。本日の住民投票は公正でしょうか不公正でしょうか?

全員: 公正です

PL: あなたがた個人の印象でヘルソン市民のロシアとウクライナに対する支持の割合はどんな感じでしょうか?

投票待ちの人々: 大多数はロシア支持。少なくとも80%はロシア支持。もっと多いと思う。



投票に来た女性に質問

PL: 今の状況を教えてください。投票の雰囲気はどうですか?

女性: 雰囲気は良いです。私たちはロシアと共により良い未来に向けて歩み始める自信にあふれています。
なぜならロシアはいつもこの町にいてくれてからです。ロシアの兵士たちはこの町のために血を流してくれました。ロシアの援助であらゆるものが再建されました。ここはロシアの土地です。私たちはロシアと共にあるべきです。

PL: 投票の自由は与えられていると思いますか?ロシアへの編入に反対する人々に対する圧力や強要があると思いますか?

女性: 近所の人たちはオープンに意見を言い合ってます。多くはロシア支持ですが親ウクライナの人もいます。
私たちはそういう人とも普段通り挨拶を交わします。平穏です。彼らが投票の結果に対して報復をするとは思いません。

PL: 今日の投票に対するウクライナの挑発が怖いですか?

女性: もともと危険に対する感覚が鈍いので。しかし、まったく恐れていません。



前出の保健局長に質問

PL: 今日、私たちはこの町で兵士の姿を見かけました。なぜ彼らはここにいるのですか?
ウクライナはロシア兵がロシアに有利な投票を強要していると言っていますが?

男性: 彼らは兵士ではありません。法執行官です。彼らは法秩序を守るために市や州に派遣されます。多くのテログループが活動していますから。
私たちは市民たちの命を案じています、人々はまだウクライナ軍による恒常的な威嚇の下で暮らしています。
すべてはうまくいきます。我々が何年も待ち臨んだ投票を誰一人妨害することはできません。



別の男性に質問

PL: 今日の状況を教えてください

男性: もちろん状況は緊迫しています。

PL: なぜですか?

男性: ここにいておわかりのように爆発音が聞こえるでしょう。市民やインフラへの攻撃が一日おきに行われています。

PL: 誰が攻撃を?

男性: ウクライナです。ほかに誰がここを攻撃するでしょうか?

PL: どうしてそう思うのですか?ウクライナはロシアが市民を攻撃していると言っていますが。

男性: 彼らの言うことはまったく悪い冗談です。砲弾はニコラエフの方角から飛んできます。その方角にロシア軍はいません。 したがってウクライナによるものだと断定できるのです。
砲弾が市役所に着弾すれば、攻撃はウクライナによるものだと人々は理解するでしょう。
なぜなら、現在そこには(ロシア側の)職員がいるからです。そして、(ロシアが)自分たちの味方を攻撃するという作り話はもはやヘルソンでは受け入れられません。いつまでもそんな言い訳が通用すると思ったら大間違いです。

PL: ヘルソン市はこの後どう変わると思いますか?何を望んでいますか?

男性: 世界の流れですかそれともヘルソンやウクライナについてですか?

PL: 全般に

男性: 米国、中国、ロシアよる世界の再編が進むでしょう。この戦争をきっかけに。母国語による分離主義を語る必要はありません。
我々は2014年の革命に誰が力を貸していたのか、だれの政治信条がマイダンに反映されていたのかよく知っています。米国は全面的にウクライナ政府を支持しました。米国高官たちの声明では当時彼らがすでにロシアと戦争状態にあると語られました。事実上の代理戦争です。しかし、彼らは「これは代理戦争である」という声明を出したでしょうか?あなたはアメリカ人ジャーナリストですよね?
米国はウクライナを戦場にしてロシアと戦っているのです。
ウクライナ政府による2014年以降のイデオロギー的なプロパガンダがなければ、このような戦争は起きなかったでしょう。

PL: あなたはここにいるロシア兵士から(投票に関して)脅迫・強要のようなものを感じますか?

男性: あなたはこの町で頻繁に(ウクライナによる)テロが行われていることを知ってますか?市の職員やその家族まで狙われています。
彼らはウクライナのインターネットコミュニティで分離独立主義者たちを殺すことを「良し」としているのです。地元の人たちは彼らをゲリラ兵と呼んでいます。 だから町は軍隊や警察によって警備されているのです。

PL: ロシアとウクライナ支持の比率はどんな感じだと思いますか?

男性: それを知るために住民投票をやっているのです

PL: しかし、ウクライナはこの投票を違法だと言っています。投票に来ることは法を破ることになる。投票に来ない住民もいるでしょう?

男性: かつてセルビアが分割されたときにあなた方はそれに何の疑問も持たなかった。
しかしなぜ今(ウクライナについては)その疑問を持つのですか?


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別の投票所にて

PL: この後の予定は?

男性: 私たちは投票を行います。もうすぐ選挙委員が来ます。残念ながらここはもう安全ではありません。爆発音が聞こえます。ウクライナ軍は街を攻撃しています。
そのために私たちは特別な投票所を設けています。人々の安全は確保されています。
今からここに選挙管理委員が来て投票する。そしてみな職場に戻るのです。
もう一度言いますが、あなたが今聞いている爆撃音。あれはまさしくウクライナ軍がヘルソン市を攻撃している証拠なのです。
これが自分たちの意思を表明したヘルソン市民に対するウクライナ政府の復讐の方法なのです。

PL: 今日の様子は

男性: すべて順調です。ご覧になってわかるようにきわめて合法的な住民たちの意思表明のプロセスになっています。あいまいさも誤解もありませんし、コマーシャルも腐敗もありません。人々はここへ来て純粋に選択を行っています。選択は住民の権利です。


以上がランカスター氏の最新リポート。
以前見たヘルソン市のリポートと違いウクライナを支持する声は全くなかった。これには少し驚いた。
考えられる理由は、初日の投票がエッセンシャルワーカーや州の職員に限られていること。
劣勢がわかっているウクライナ支持者たちが、ウクライナ政府が「違法選挙」と呼ぶ投票に参加するかというところ。
ただ以前のリポートにも共通して言えることは、少なくともロシアがコントロールするこの町には「ウクライナを支持する自由」があるということ。 住民投票に「反対」の票を投じる自由があること。投票に参加しない自由があること。ロシアの市民権を拒否する自由があること。
これは西側、特に日本のメディアが全く報じないところだ。
反対にウクライナ政府はこの投票は違法とし、投票をすること自体を禁止している。ロシアを支持することも認めない。はたしてどちらが民主主義的か?我々はよく考えるべきだ。
ウクライナ政府を支持する人々を今後ロシアがどのようにケアしていくか、ヘルソン市民がどのように分断を防いでいくか、この辺が次の課題になっていくのかもしれない。



2022年9月記


今日の一枚
” 試着 ” ウクライナ・マリウポリ 2009年







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