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ポリネシア その2


サモアが舞台だという噂を聞き、ディズニーアニメ「モアナと伝説の海」を見た。なるほど、村長の娘モアナが暮らす島の小さな村はサモアっぽい。彼女はやがて村長の地位を継ぐことになり、村人は危険な外海に出ることもなく珊瑚環礁の内側の島で平穏に暮らしていた。ところが、食物の不作がきっかけで平穏は打ち砕かれる。モアナは洞窟の中に隠された古代人たちの船を発見し、かつて自分たちの祖先が大海を渡り新世界を切り開いてきた冒険者だったことを知る。村人たちが生き延びるためにモアナ自ら移住すべく新天地を見つけるために危険な外海に乗り出す。創造女神テ・フィティの心を盗んだ半神半人のマウイとともに。二人は心を失ったことで溶岩の怪物に変身させられた女神にその心を返し、村人のために新しい安住の地を見つけることはできるのか・・


さて、ここから先はネタバレ注意。


二人は無事、女神に心を返すことができた。怪物の呪いが解かれ、女神は自らが緑の島に姿を変えた。モアナは故郷の島に戻り、村人たちに新天地を指し示した。
女神が姿を変えた緑の島はハワイ島の比喩だと思うがどうだろう。その横にはマウイ島が横たわり、オアフ島にはアラ・モアナという地名がある。おそらくこの物語は、サモア(映画の中のサモアは米領サモアかもしれないが)に住んでいた人たちが再び新しい世界を切り開くために大洋をわたりハワイにたどり着き、溶岩と炎の支配する島を緑の島に変えていったという史実を伝説に絡めて描いているのではないか。
現在のハワイを東や西から見たら、高級ホテルやコンドミニアム、ビーチしか見えない。しかし、南から見ると全く違うハワイが見えて来るのかもしれない。それはアメリカ文化に飲み込まれる前のポリネシアの島だ。


もうひとつ。「サモア人はなぜ土地に執着するのか?」この映画を見て、その理由がわかったような気がする。彼らの祖先は冒険者であり開拓者であった。自ら切り開いた土地だからその所有を主張する。もちろん大陸を開拓していった人々も同様かもしれない。けれども僕が驚かされたのは、陸地と違い孤島だと思っていた太平洋の小さな島々を古代ポリネシア人たちは独自の航海術で自由に行き来してたということだ。西欧の大航海時代よりも遥か昔に。サモア人の顔にはその歴史が刻み込まれている。



2020年1月記


今日の一枚
” ポートレイト ” サモア・アピア 2019年




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