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カズベギの秋 その1


ジョージア北部のカズベギで紅葉を楽しんできた。首都ティビリシからジョージア・ミリタリー・ハイウエイを走ること1時間半、ロシア国境のほど近く。山間の村ステパンツミンダが今回の散策の起点。まずは向かいの山の頂上にあるサメバ教会(三位一体教会)までのハイキング。ズバリこれがカズベギ観光の目玉で、小さな村には海外からの旅行者がいっぱいだ。
きれいな舗装道路が山頂まで通っていてタクシーの客引きも熱心だが、なんとなく歩きたくなる距離と景色。麓にあるゲルゲティの集落を抜ける。僕が宿をとったステパンツミンダ地区は建設ラッシュで真新しいロッジがどんどん建っているが、こちらは昔ながらの家並みが残っていてなかなか趣がある。石と木で作られた家の前で干し草がトラックに積まれている。家畜が牧草を食んでいる。山里の秋だなぁ。


集落を抜けるとそこで初めて教会へのハイキングコースに入る。色づいた木々の間を歩く。その目の覚めるような黄色と雲ひとつない青空、背景に覗く雪をかぶったカズベク峰(5047m)のコントラストが美しい。下界を見やると向かいの山裾のステパンツミンダはもう随分小さくなって、その後ろにとてつもなく大きな岩山がそびえ立っている。ああ、宿の裏山はあんなに高い山だったのか。おそらく4000m近い。僕には4千、5千メートルという山の高さ自体ピンと来ないが、いきなり4千メートルの高峰が背後にそそり立つ感覚は、自分の日常からはとうてい想像できないものだった。


標高1750mの村から600mほど登っただろうか。挨拶するのも疲れるくらい登山客とすれ違うから心細くはない。しかし、1.4kmのハイキングコースを僕はもう2時間近く歩いている。日頃の運動不足からか、標高のせいなのか、とにかく息が切れる。永遠に続きそうな急坂を歩いていると、突然、視界が開けた。
なだらかな草地のうねりの先にその教会は建っていた。教会の横まできれいに舗装された道路が緩やかなカーブを描いている。自分が持っているガイドブックの写真にはこの道路は写っていないから、割と最近作られたものなのかもしれない。


2019年11月記


今日の一枚
” 色づく木々とカズベク峰 ” ジョージア・カズベギ 2019年




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