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膨張するアジア


イランの展示を終了し、アジアギャラリーを少しばかり模様替えした。そこでふと気づく、300枚?まずいアジアだけが異様に膨張してしまった(笑)にもかかわらず、急いで作業を終えた僕はさらにダメを押すようにバングラデシュへと旅立った。ひと月前のことである。


アジア集中の理由は、昨今の円安の影響で予算が厳しく近場にしか行けなくなったという切実な悩みがひとつ。そして、アジアの人々の関連性を集中的に確かめてみたくなったというカッコイイ理由がひとつ。今回、念願かなってバングラデシュを訪れることができ、僕のアジアは日本からイランまでが繋がった。


アジアギャラリーが形になるまで10年かかった。若き日に世界一周のチケットでも買って、1年という時間を使い、一気に地球を周ってしまえば、まとまった作品ができたのでは...と考えたこともある。世界がもうちょっと平和だったあの頃なら、パキスタンもイエメンもマリも行けたに違いない。


しかしね、1年2年おきにちょびちょびとカメラをぶら下げて出かけて行くのも良いものですよ。毎年ひとつずつ歳を重ね、考え方も変化し、機材も変わり、撮影スタイルも変わる、世界情勢も変わる。僕が見つけた小さな兆候はやがて大きな問題になった。あらゆる世界に向かって開いていた僕の扉が今後、節操の無い外交によって閉ざされてしまうことがないことを願うばかりだ。


さて、アジアギャラリーが膨張し続けていると書いたが、経済の面においても世界で最も元気なのはアジアかもしれない。少しばかり長い期間で振り返ると僕は中東にもアフリカにも欧州にも行っているが、やはりアジアの国々は活気が違う。旅先でもまた、アジアからの旅行者に頻繁に出会うようになった。新興国の台頭ぶりを僻んだり妬んだりする人もいるけれど僕はそうは思わない。同じ地域の仲間たちが元気なのはなんとなく嬉しいものではないか。



2015年2月記



今日の一枚
” リクシャ・ア・ゴーゴー ” バングラデシュ・ダッカ 2015年




fumikatz osada photographie