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コンコルドは飛んでいく


僕の知る限り、地下鉄で行けるニューヨークのビーチは2つ。

1つはコニーアイランド。ブルックリンの住宅地の端っこにある小さなビーチは箱庭のようだ。ボードウォーク、みやげ物屋、ホットドッグとエビフライの店、寂れた遊園地・・・とキッチュな魅力がいっぱい。平日は閑散としているが休日ともなれば家族連れや釣り人たちで賑わう。

さて、もうひとつはコニーに比べてやや遠い。ケネディー空港の沖合いに伸びる砂州のような場所。砂州とは言っても地下鉄(ここでは地上に出ているが)が走り、アパートが建ち並ぶりっぱな街だ。こちらはロックアウェイビーチと言う。大西洋の荒波をもろにかぶる本格的なビーチ。3キロにわたる砂浜の海岸線。大西洋は水温が低く、泳ぎには適さないそうだが海水浴シーズンにはライフガードもいる。

僕はこのロックアウェイビーチが好きだった。砂浜に寝転がっていると、ケネディー空港から離陸した飛行機が頭上で旋回するというアトラクションも付く。ニューヨークを離れる友人の飛行機をここで見送ったこともある。
ひと際大きな爆音を立てて飛んでいくのがコンコルドだった。午前中に2機。1機はパリに、もう1機はロンドンに向かう。 超音速旅客機を見上げながら海水浴をしたのは後にも先にもココだけだ。

月日は流れ、超音速旅客機は過去の遺物となってしまったが、あの浜辺には今も心地良い潮風が吹き抜けているに違いない。


2005年7月記



今日の一枚
”コンコルドビーチ” アメリカ・ ニューヨーク ロックアウェイビーチ 1992年


スタッテンアイランドフェリーとアーサーの思い出 その1




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