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カザフスタン人の顔 その1


白タクの件で文句タラタラになってしまったが、カザフスタンが嫌いなわけではない。興味があったからこそ今回の旅の起点にしたのだ。


話は27年前に遡る。ニューヨークに住み始めてまもなく国際写真センターのワークショップを受講している人と知り合った。
どんな写真を撮るのか興味があったので、作品を見せて欲しいとお願いしたら、快くOKしてくれた。彼の本業は写真家ではなかったが、頻繁に海外に出かけていって人物の写真を撮っているそうだ。
「直近ではカザフスタンへ行ったよ」「それはどこ?」当時の僕にとってカザフスタンはその程度の認識だった。「中央アジア。ソ連さ」「ほう、どういう顔をした人々が住んでるの?」「キミみたいな顔さ」「え?ソ連・・・だよね?」ソ連に自分と同じ北東アジアの顔をした人が住んでいるなんて俄かに信じがたい。


彼の写真は素晴らしかった。被写体との距離が非常に近く、人々の日常に深く入り込んでいる様がうかがえた。よくある旅行写真とは明らかに一線を画している。お世辞ではなくその作品がすばらしかったので僕は写真センターに通うことにした。
そして写真に映ってるカザフスタン人は・・・なるほどロシア系のコーカソイドもいれば、モンゴロイドも多い。
まだ、カザフスタンがソ連から独立する前の話である。


それから長い年月を経て、ついにその国を訪問することになった。カザフスタン一の都市、アルマトイで見かける顔立ちは実に多彩。
新疆ウイグル自治区のカシュガルに行った時、中国なのに西洋人のような顔立ちの人々に出合ってドキッとした思い出がある。さらに西に進んだらどうなるか?東アジア人の要素はますます薄くなりそうではないか。
ところが、カザフスタンに入るや否やぐいっと北東アジアの顔に引き戻された。カザフ系の人々はお隣のモンゴル、中国に跨って暮らしているそうだ。ソ連の時代があったから当然ロシア系の人々もいる。さらには南のウズベク系と、カザフスタンには多種多様な顔が見事に散りばめられていた。
僕がアルマトイを歩いていて幾度となくロシア人旅行者に道を聞かれたのは、遠い昔に言われた「カザフスタン人はキミみたいな顔さ」を証明している。いや、正確には「僕のような顔立ちの人たちも多く居る」かな。



2018年6月記



今日の一枚
” ポートレイト ” カザフスタン・シムケント 2017年




fumikatz osada photographie