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北国の春 その2


ウルムチは僕にとって2度目の訪問。前回は・・・もう12年前、カシュガルを撮った時だ。ソウルで飛行機を乗り継いで夜霧のウルムチ空港に降り立った僕は心細さでいっぱいだった。
なにせ自分にとって初めての中国が、イスラム教徒の多く住む新疆ウイグル自治区だったのだから。おそらくここは中国の多様性を感じる場所の1つだろう。お陰で僕は中国に対して変なアレルギーを持たずに済んだ。もし、それが上海だったら自分は中国を嫌いになっていたかもしれない。
話が脱線した。真夜中のウルムチ空港でうるさいタクシーの客引きを逃れて辺りのホテル探し始めた。ところが、どちらの方向に行ったらいいか皆目見当がつかない。全く無茶な話だ。スマホもない時代、宿の予約も要れず、夜中にホテルを探し歩くなんて。
そんな僕に声を掛けてくれたのは勤務を終えた空港職員の女性3人組だった。「英語が話せなくてすみません」と恐縮しながらもこちらの意思を汲み取ってくれて「机場賓館」というホテルに案内してくれた。いやいや、恐縮なんかする必要はないですよ。中国語やウイグル語を話せない僕がいけないのだから。


あれから12年、ウルムチは変わったかって?おそらく。中国の都市は「立ち退き要請」の看板と重機だらけだから街並みも変わってるのだろう。でも、どこが12年前と変わったかなんて住民でさえわからない、多分。
僕にも分かる変化は圧倒的に外国語を話す人が増えたということだ。前回は筆談のために何ページ手帳を破いたことか。まあ、英語を話す人が増えたのはわかる。しかし、日本語もというのはすごい。これは、中国の他の都市でも感じた。観光で日本を訪れたことのある中国人が増えたからかな。


さて、ウルムチの良い変化について書いたが、ここからは悪い変化。それはセキュリティチェックが厳重になったこと、町中が監視カメラだらけになったことだ。もともとテロが多いところだったからセキュリティは厳しかったが、これほどではなかった。どの路地にも頭上には必ず監視カメラ。行動を見張られているというのはストレスになる。
道徳の看板みたいなものも増えた。「家族は助け合いましょう。親を養いましょう。年寄りはいたわりましょう」どこかの国の道徳の正式教科化や改憲草案とダブる。中国といえば皆で働いて強い国をつくろうみたいなスローガンが多かったのに・・・
よく見ると家々の玄関に「文明家庭」「平安家庭」なるステッカーが貼られている。身元のハッキリしている優良家庭ということかな?ステッカーに関しては何を調べても分からなかったが、これもまた保安上の理由かもしれない。
いつかは訪ねたいと思っていた少数民族の村も個人旅行が禁止されてしまった。新疆ファンの僕としては、旅人が羽を伸ばせるような場所であって欲しい。人も文化も魅力的な場所なのだから。


春風に誘われて路線バスで街に出た。さてと、今日は紅山公園にでも行ってみようかな。



2018年5月記



今日の一枚
” 路線バスに乗って ” 中国・新疆ウイグル自治区・ウルムチ 2017年




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