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バングラデシュと水の深ーい関係 その1


着陸のために飛行機が高度を落とす。眼下に街のある様子はない、レンガ工場かセメント工場か煙突が何もない大地に突っ立っている。くねくねと曲がりくねった川が流れ、ゴルフ場にあるような小さな池があちらこちらに見えた。飛行機を降り、手すきガラスで囲まれたような古ぼけた乗客通路をくぐると、今度は木枠のパーテーションで区切られた乗客待合室の年季の入った木製ベンチが目に入った。それほど古い空港ではないはずだけど・・・久々に味わう不安感(笑)しかし、この程度のカルチャーショックには30分ほどで順応できた。


その後2週間、僕が見たバングラデシュの風景を総括してしまうとあの機内から見た景色がほぼすべてだったなあ。川と溜池、沼、背の高い熱帯の木々、農耕地がずーっとリピートする感じ。とりわけ川と池はバングラデシュの風景を語る上では絶対的要素だ。
雨季には国土の約3割が洪水で水に浸かるのだそうだ。ヒマラヤからインドを抜けてくるガンジス川が、河口で毛細血管のように枝分かれしてベンガル湾に流れ込んでいる。そのデルタ地帯に位置するのがバングラデシュ。短く急流の河川を持つ日本人にはいまいちピンと来ないけれど、大陸の大河の下流に住むベンガルの人々は氾濫する川は肥えた土を農耕地に運んで来てくれるということを知っている。(アフリカなど世界にはわりと雨季に氾濫する川を放っておく地域も多い)しかし、ここは世界で最も人口密度の高い国。「洪水の程度」が問題だ。当然、度が過ぎれば大災害になる。


さてここで本題。今回はバングラデシュの人たちと水の関係について。先に書いたような地理的、気候的条件の上に生活が成り立っているわけだから、バングラデシュの人たちは雨がふったら溢れる川や池を厄介なものだとは思っていない。逆にいうと、水と上手に付き合えなければバングラデシュでは生きて行けないのだ。
例えば川。国土が河口デルタにあるということは交通網が無数の川で分断されているということ。そこで船が大きな役割を持ってくる。渡し舟を使わなければ橋の架かる地点まで遠回りをしなくてはいけなくなる。もちろん水運も重要。川はまた付近で生活する人たちの生活用水にもなっている。主婦たちは洗濯物を持って水辺に洗濯に行く、衣類を川の水で洗い何度も何度も石にたたきつける、しぶきを上げ腕をグルグル回して。だから、バングラデシュのお母さんの腕は筋肉質だ。その横をアヒルたちが悠々と泳ぐ。アヒルやタマゴは食用として市場に並ぶんだろうなあ。もちろん猟師の獲った川魚も。さらにその向こうでは人々が沐浴をしている。



2015年2月記



今日の一枚
” 振りかぶり叩きつける ” バングラデシュ・ラッシャイ 2015年




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