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長田文克の人類小図鑑 その1


今回は僕の「顔研究」の中間報告。ぜひ傍らに世界地図を置いて読んで頂きたい。


初めて訪れた土地へ行くと人々の顔を観察してしまう。「うーん、美人」それもあるね。でも、もうちょっと客観的に分析。顔のパーツの中でも鼻と目はそれぞれの地域の特徴が出て面白い。
イラン人の顔の特徴は高い鼻と切れ長の目だった。単に高い鼻といってもいろいろある。イラン人の鼻は小鼻がラッパのように広がっている。鋭い鼻筋は先端で鷲のくちばしのようにとがっている。一方、目はハッキリした切れ長の目。アーモンド型の目がスッと真横に流れている。顔全体としては非常に精悍でキリッとした印象だ。


この顔はイランより東の顔の造形に大きな影響を与えている。世界地図の上をイランから北東に進んでみよう。トルクメニスタン、タジキスタン、中国に入って新疆ウイグル自治区、かつてのシルクロードの道筋だ。
そこで、以前訪ねたカシュガルの人々の顔を思い出してみる。逆に東から来るとあの辺りで明らかに人々の顔が変わった。東アジアのモンゴロイドの顔ではないほかの顔の要素が人々の顔に入っていた。しかし、当時まだカシュガル以西を見ていなかった自分にとっては、その顔の要素がどこから来たのか皆目見当がつかない。とにかくもっと西の白人(コーカソイド)たちの顔の造形ではないだろうかという程度だった。


けれども今、イラン人の顔を見た後で例えばカシュガルの仕立て屋の女性の写真を見ると、明らかにその影響を受けていることがわかる。切れ長のハッキリした目、小鼻が張り筋の通った高い鼻。どうでしょう?そう思いませんか?(笑)
もう一枚、西瓜を抱えた男性のコミカルなポートレイトを見てみよう。場所は同じくカシュガルだ。彼の目は東アジア人のように細い。でも良く観察すると鼻が違う。幅広く高く筋の通った鋭角的な鼻。イラン系の要素である。
やはり新疆ウイグル自治区の人たちは文化的にも民族的にもイランに近いのだなと実感させられる。そういえば以前、新疆ウイグル自治区ではペルシャ語がけっこう通じたという話を聞いたことがある。ここは言語的にもイランに近いのだろう。


さて、大陸をさらに東へ進む。新疆を出ると顔はなだらかに変化していく。中国の真ん中、甘粛省あたりだと鼻の大きな西からの流れ間隔が開き目尻が下がった温和な目と赤い頬のチベット系中くらいの高さでシンプルな造形の鼻と細い目を持つ東アジア系の顔が混在する。やがて三番目の顔が大部分を占めるようになりアジアの東の端に至る。


2013年11月記



今日の一枚
” ポートレイト ” イラン・エスファハン 2013年




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