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インドは今でも旅のスタンダードか? その2


さて、長くなってしまったインドを締めくくろう。
僕が学生だった頃から既にインドはバックパッカー達の定番であった。初めての海外自由旅行にインドを選んだ人も少なくなかった。若い旅行者にとって物価の安いインドはまさに天国だけど、今のようにインフラも整ってなく、インターネットも無い25年前のインド旅行は苦労も多かったんじゃないだろうか。しかし、時は21世紀。インドもずいぶん変った。おそらく。


現在のインド。それはデリーの旧市街で人いきれと騒音というタフなインドを嫌と言うほど見せられるのに、駅の反対側に行くと近代的な高層ビルが建ち並び、地下鉄の駅に人が出入りする都市。公園では犬の散歩をする人に出会う。実に平然と現代風の生活をしているところ。デリーでさえそうなのだからインド経済の中心ムンバイなんていわずもがなであろう。
それではインドの普通の人はみな裕福な生活をしているのかといえば、そうでもないようだ。橋の上で生活する人もいる、線路のポイントとポイントの間にテントを張って生活する人も見た。最も伸びている新興国のひとつとして挙げられて久しいのに。いったいどれがホントのインドなのかよく解らなくなる。
しかし、その多様性は旅人にとって幸運な要素である。節約しようと思えばとことん安くあげられる。優雅に周ろうと思えば贅沢できる。お決まりの観光ルートで満足できればそれで良し。うるさい客引きに我慢できなければちょこっとわき道にそれてみればいい。ほら、僕が偶然路線バスに乗ってしまったように。おそらく、素朴で純情なインド人に会えるんじゃないだろうか。


とまあ、ここでうんちくを書いてもしようがない。何を隠そう僕にとってはこれが初インドなのだから(笑)学生時代は香港編同様、インド編も完全に友人の土産話の聞き役に回っていた。人一倍内気な性格で「そんな得体の知れない国に行くなんて、みんなどうかしている」と思っていた。その後、ご周知のごとく世界のあちこちに行くようになり、少しだけ度胸もついて。結果、こんなに遅いインドデビューになった(笑)しかし、かえって初めてこの国を訪れる人とはちょっと違った見方ができたかもしれない。


その視点で総括するとインドはみごとに「真ん中」だった。インドよりず過酷な場所は世界にたくさんある。その一方、インドより快適な旅ができる場所もたくさんある。インドはその中間あたり。
切符の買い方、腐るほどある移動手段の選び方、ハプニングのときの対処のしかた、いい人の見分け方、異文化への溶け込み方、うまくて安いメシ屋の見つけ方・・・インドには若い旅人たちが今後出会うであろう練習問題が絶妙なバランスと難易度でちりばめられている(笑)


それを証明するかのように、今日もまた多くの若い旅行者たちがインドを旅している。インドってやはり今でも旅のスタンダードなんだなぁ。旅行の世界において四半世紀以上もその確固たる性格を保ち続けるのは結構凄いことなのかもしれないね。


2013年5月記



今日の一枚
” ポートレイト ” インド・プシュカル 2012年




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