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ブレストという町


ブレストという町がフランス・ブルターニュ半島の先端にある。その町で僕は21世紀最初の元日を迎えた。早いものであれから9年だ。

そういえば、僕はスペインのタリファなんていうこれまた半島の先っぽで年を越したこともあった。これには全く特別な理由はなく、内陸よりも海辺の方が好きという僕の旅の好みから来たものだ。たまたま正月にそこにいた。

半島には共通した特徴がある。それは風が強いということ。風が吹くというのは暑い場所では非常にありがたい。たとえば、半島にあるセネガルのダカールなどは内陸の都市に比べてずいぶん過ごしやすい。内陸部の都市タンバクンダの真夏の暑さなんてセネガル人でも怯んでいたのだから。

しかし逆に、その風が災いになることもある。いや、むしろそちらの方が多いかもしれない。
2000年、大晦日のブレストも横殴りの雨と風で大荒れの天候だった。花火の音がするのでホテルを出て港の方へ行ってみたのだが、雨に煙るもやの中から明りと音だけが聞こえるばかりで全く花火の体を成していなった。主催者側としては大晦日の花火は何がなんでも中止できなかったのだと思う。結局、なんだか良くわからないモヤモヤとした明りを楽しんだ僕は、ずぶ濡れの服にオチョコの傘というかなり悲惨な格好でホテルに帰りついた。とんだ21世紀の幕開けである。

翌日、雨があがり僕は新年の街を歩いた。遊歩道には木々の枝たくさん落ちている。高台から見下ろす埠頭の店々はシャッターを下ろしている。人通りのない元日の街で窓から覗くオブジェのふたりだけがこちらの様子をじっとうかがっていた。

ブレストには2年後アフリカの帰りに再び立ち寄ることになった。そのときも強い風と雨でなかなかスリルのある着陸だったのを覚えている。願わくば、もうすこし良い季節にこの半島の町を訪ねてみたいものだ。


ここでふと、傍らのカレンダーを見る。2010年。僕たちは、なんだかずいぶん遠い未来に来てしまったような気がしませんか?(笑)

2010年1月記



今日の一枚
”1月1日のふたり ” フランス・ブレスト 2001年




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