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残念ながらキミはボツだ、しかし・・・


パリという大都市の中で、大人以上に優れたバランス感覚をもって暮らしている子供たち。そんな彼らを一人の人格者として見てみよう、というのが僕の作品”souvenirs(スヴニール)”のテーマだった。だからといって、子供たちがいつもしかめ面をして現実社会の諸問題について考えているわけではない。そういう人たちのことを世間一般的に「おとな」と呼ぶのだ。
カメラをぶら下げて公園に行くと、いつも同じグループが卓球をしていた。運河の石畳では毎日子供たちがコマ回しをしていた。やがて僕らは顔見知りになって言葉を交わした。


公園で、街角で、子供たちが僕のカメラの前で一番最初にやることは、大概、ピースサインか悪ふざけ。これは世界中どこに行っても同じではないだろうか?
残念ながらシリーズとしてのくくりでは彼らのそんな最も子供らしい表情は省かせてもらった。こういうところがテーマでくくるという作品づくりの欠点であると思う。すなわち、作品では彼らが「極度の興奮状態」から脱した2枚目以降の写真を集めたというわけだ。2枚目以降の写真であるものは大人びた表情を見せ、あるものは純粋さを覗かせた。それでは、照れ隠しにやった彼らの「子供らしい一発芸」が嫌いか?というとそんなことはない。十分に魅力的だ。時折見せる大人びた表情ではなく、一生懸命作った「面白顔」のほうがむしろ「普段の彼らの姿」なのだろう。


例えば、モンマルトルで僕のレンズの前に現れた少年もそんな一人だった。彼はフレームの中で全身全霊をかけて「面白顔」を作り走り去っていった。僕に2枚目の写真を撮らせずに・・・残念ながら、キミは作品のコンセプトから外れているのでボツだ。しかし、ここに最も子供らしかったキミのポートレイトを置くことにしよう。


2006年7月記



今日の一枚
” 面白顔 ” フランス・パリ 2001年




fumikatz osada photographie