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3Aプレーヤー


シエンフエゴスという街のスタジアムで野球の練習を見ていた。やがて、グラウンドの選手が僕に気づき中に入れてくれる。気がついたら自分もダッシュを何本かやらされていた。草野球チームらしかったがみんなすごく上手だ。キューバ人が野球をやっているから上手く“見える”のではなく、実際、キューバの野球のレベルは高いと感じた。


ひとしきり練習メニューをこなした後「こいつはサ、アメリカの3Aの選手なんだよ」とひとりの男を紹介された。話を聞くとシーズンオフでキューバに里帰りしているらしい。自主トレも兼ねて仲間たちと毎日練習しているそうだ。言われてみれば、確かに他の選手たちと体格が違うような気がする。メジャーリーガーっぽい風貌だ。しかし、本人は意外に気さくで「うち、民宿やっているんだけど良かったら泊まっていかない?何ドルの宿に泊まっているの?うちは1泊10ドルでいいよ」 と話しかけてきた。
プロ野球選手に客引きされてしまった。しかも、値引きまでしてきた。気持ちは揺らいだが、既に宿は取ってあったので断った。少しもったいなかったかな。またとないオファーだったのに・・・

たとえば、彼が1日2時間野球を教えてくれるのなら少々割高の宿泊料でも客は集まりそうだ。「プロ野球選手のレッスン付きご宿泊プラン1泊25ドルより」ペンション3A。こんなコピーが頭に浮かんでしまうのは、僕が資本主義にどっぷり浸かってしまっている証拠かもしれない。


ところで、彼は本当に3Aの選手なのだろうか?名前ぐらいメモしておけば良かった。彼がその後メジャーで大活躍していたりしたら、話としてかなり面白い。


2005年6月記



今日の一枚
”野球場” キューバ・シエンフエゴス 1998年




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