東京は遥か遠く
GPSに従って街に着いたはずなのに街がなくなっていた。こんな経験はかつてしたこともないし、こんな寂寥感も味わったことがない。東北の津波の被災地を訪ねた私は、それを一度ならず何度も経験した。
2011年3月11日の大地震とそれに伴って起こった津波は東日本の太平洋岸およそ400kmに渡って壊滅的な被害を与えた。東松島、石巻、南三陸、気仙沼、陸前高田、大船渡、釜石、大槌といった被災地を震災から1年経ってようやく訪ねることができた。
あの大地震は私たち東日本に住む人間には大きな心の傷になった。震災以前の私たちと以後の私たちは明らかに違う。津波の被災地を実際に訪れるとその爪あとは未だ生々しくて、震災は被災地の住民の人たちの心にもっともっと大きな傷を残したに違いない。以前、私はここで悲劇と喜劇について触れたが、これを「悲劇」と呼ばずして何と呼べばよいのか。
しかし、いつまでも感傷に浸っているわけにはいかない。生きてゆくことは大変なことで、世の中というのは私たち生き残っている人間を優先してまわっていかなければならないからだ。
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