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健康とは何ぞや その1


血圧高い、コレステロール高い、血管年齢高い、メタボ・・・健康診断の結果を見るのが苦痛だ。昨年は結果を見て睡眠障害になってしまった。10年位前から食事も運動も節制してきたつもりなのに、 その甲斐もなく・・・というのがショックだった。だったら健康診断なんて受けなければ良い。けれど受けなければ受けないで不安になる。そして今年も厚生労働省やら医学学会やらの定める気まぐれな上限値に照らして一喜一憂するのだ。


TVをつければ健康食品のCMばかり「60代で血管が詰まり始め、やがて破裂する」とか「130以上は高血圧」とか、あれやこれやと消費者の不安をあおり商品を買わせる。僕はこれを「脅迫商法」と呼んでいる。霊感商法みたいなものだ。
スーパーの棚からサバ缶が突如消える。ああ、テレビでサバ缶の持つ健康パワーをやったんだな。暫くサバ缶抜きの生活が続いたある日、店員のおばちゃんが寄ってきて情報屋のように僕にそっと耳打ちした「お兄さんサバ缶入ったわよ・・」 まあ大抵どんな食品もひとつぐらい効能を持っているだろう。しかしTVで特集されるたびにあれが売り切れ、これが品薄になり・・そして値段が上がってゆく。
特定保健用食品なんてのもある。認定料としてメーカーは厚生労働省にいくら払っているんだろう。商品価格の何%がトクホマーク代なんだろうか。効果も定かではないのに。
健康診断もTVの健康情報番組もトクホも、人々の健康増進のためと見せかけて、なんとなくその後ろに利権やら商売やらが見え隠れするのが嫌だ。しかし、日本はこの健康意識の高さゆえに世界一の長寿国になったのかもしれないな・・ とにかく僕のように健康診断の紙切れ一枚で病気になるような気の弱い人間は、頭でかっちになると不安しか芽生えない。「知らぬが仏」とはよく言ったものだ。


とまあ、最近の僕はこんな健康状態なのでとても冬のヨーロッパなどには行く気になれない。だから南に行く。決して南にハマって僕の大切な切り札を無駄使いしてるわけではない。
昨年はインドネシアを目的地に選んだ。旅先での僕はすこぶる快調。やはり自分には暑い気候が合っているようだ。けれども、日本に帰って秋が深まる頃になると気分が落ちてくる。今冬は昔やったパニック障害のような症状も再発して辛かった。自分の体のことを考えすぎてはいけないと思うと考えてしまい、眠らなくちゃいけない思うと眠れなくなってしまう。自分の個人情報を晒してはいけないと思うとこうして書き連ねてしまうのだから困ったものだ。
今回は飛行機移動さえも不安だった。サモアへ行くべきか行かぬべきか・・・しかし、ふとエメラルドグリーンの海を望む椰子の木陰でパニック障害になる自分を冷静に観察したくなった(笑)人はどうやって楽園でパニックに陥るのか・・・もう不条理なコメディ以外の何ものでもない。



2019年5月記


今日の一枚
” ポートレイト ” サモア・シウム 2019年




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