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タクシー運転手 その1


いつしかタクシー嫌いになった。思いつく原因はいろいろある。例えばバブルの頃、近距離過ぎるという理由で夜中の通りで空車のタクシーに乗車拒否されたり、駅前でタクシー運転手に邪魔だと怒鳴られたり。かとおもえば、その運転手たちが狭い道にずらりと路駐をして昼寝をしていたり・・・運賃はバカ高いし、幾分安い格安タクシーには国がおかしな規制をかけるし、とまあ日本のタクシーや運転手にはこれっぽっちも良い印象はない。
海外での苦い経験が僕のタクシー嫌いに拍車を掛ける。定員オーバーの乗り合いタクシーやら、ぼったくりの白タクやら・・・嫌な思いをしたことこそあれ、タクシーの運ちゃんに親切にされたことなどただの一度もなかった。


ところが、相変わらずぼったくり白タクに引っかかってしまう(笑)自分には学習能力というものがないのだ。処はカザフスタン・アルマトイの空港、時刻は夜の10時。到着口から出るとすぐに2、3人の白タク運転手に囲まれる。バスは終わっていそうだし、正規の空港タクシーの乗り場はわからない。僕が動くとまるで取り巻きの記者のように運転手たちもくっついてくる。
たいして遅い時間でもない、もう少し落ち着いて考えればよかったのだ。ところが長旅の疲れもあって、つい「メータータクシーだから大丈夫だよ」の言葉を信用してしまった。


車はおんぼろのトヨタだった。運転手はロシア系で愛想はなかったが、それでも最初のうちはごく普通の旅人と地元民の会話をしていた。ところが途中から話が怪しくなる。「カザフスタンは物価が高くて困っている。家族を養うのがたいへんだ。子供が小遣いをねだる」だいたいまともな人間だったら、初対面の人に自分が金に困ってるなんて話をしないだろう。経験上なんとなく嫌な予感・・・


宿の前に着き、運転手が座席の脇から何やらロシア語と数字のリストのようなものを取り出す。そして一言「6500円」「はぁ?」である。「たかだか10kmで6500円は高いんじゃないの?大体メーターはどこにあんのよ?」すると、車のメーターを指差して「メーター」って「運転手さん、それ俺の車にも付いてる。事前情報からいくと高くても1500円程度じゃないの?」と言っても絶対に折れない。すったもんだやってると運転手が「気に入らないんだったら空港に戻ろう」と凄んできた。ただで振り出しに戻されるならよいが、多分こやつは往復13000円を請求してくるだろう。怒らせないように拝み倒して3500円にしてもらった(泣笑)
後味の悪さを考えれば、高くてもUBER(スマホアプリのタクシー配車サービス)を使ったほうが良かったよ。


この運転手は僕に2つの汚点をのこした。まず、カザフスタンに対する僕の第一印象は最悪となった。そして、僕のタクシーに対するイメージを一段と悪化させた。今回の旅では二度とタクシーは使うまい、と僕は心に誓った。



2018年5月記



今日の一枚
” 生活感 ” カザフスタン・アルマトイ 2017年




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