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エチオピア その1


東アフリカのエチオピアに行って来た。そう、あいもかわらずトンチンカンな先入観を持って。無知というのは恐ろしい。しかし、無知なほど自分の目で発見したことへの喜びも大きくなる。


東京の神保町に「エチオピア」という老舗のカレー屋がある。僕は「本場エチオピアでカレーを食べること」を楽しみにしていた。
ところが、2週間の滞在でカレーなどという食べ物には一度もお目にかからなかった。その代わりインジェラというイネ科植物の粉を発酵させクレープ状に焼いた食べ物がこの国の主食であるということを僕は知った。このインジェラ、ブルガリアヨーグルトのように酸味が強い。ブルガリアヨーグルト味のクレープ。どうだろう、あなたならいけそうだろうか?「うん、食べられそうだ」って?僕もはじめはそう思っていた。ところがこれが結構キツイ。
「インジェラ・アキ!いや・・あれはアンジェラでした」と冗談を飛ばしていた僕もだんだん口数が少なくなり最後は涙目になってしまった。とにかく酸っぱい。憶えておこう。エチオピアといえばカレー・・・ではなくインジェラだ。


「エチオピア人はみな痩せていて足が速い」そんなイメージ、皆さんも持っていないだろうか?顔もシュッっと細くて精悍そう。しかし、丸々と肥えて、走るのは苦手そうなエチオピア人もたくさんいた。考えてみればこれは「日本人なのにどうしておまえは痩せてて、相撲の技のひとつも知らねえんだ」と言ってるのと同じくらい勝手な思い込みだ。
けれども、エチオピアではマラソンの人気が高いということは確かなようだ。おりしもロンドンオリンピックの直前で、首都・アジスアベバでは景気づけとばかりに市民マラソンが行われ何千人というランナーが通りを埋め尽くしていた。そしてオリンピック本番、エチオピアの選手たちはしっかりと長距離で上位を固めた。さすがである。


「エチオピアはアフリカの太陽が容赦なく照りつけ、地面がひび割れるほど乾ききっている」このイメージもまたちょっと違っていた。エチオピアの国土は非常に変化に富んでいる。そこには海辺以外のあらゆる地形があるといっても過言ではない。国土の大部分は高地。大地溝帯の大渓谷あり、湖あり、火山あり、なだらかな丘陵地帯あり、そしてもちろんステップのような低木の生い茂る乾燥地帯もある。自分が訪れたのは雨季ということもあって雨が多く、気温も低かった。アフリカ大陸の反対側、サハラの国々に比べれば遥かに緑が豊富で生命の息吹を感じる場所だった。


さてそんな新発見の傍ら、逆に僕が期待していた通りだったことも少なからずある。そんなとき僕は嬉しさに自然と口元がほころんでしまう。


2012年10月記



今日の一枚
” アジズの街に溢れる市民ランナー ” エチオピア・アジスアベバ 2012年




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